【鍵のかかった男】推理小説で、観光気分を味わってみる 有栖川有栖

読書歴
鍵のかかった男 幻冬舎文庫 / 有栖川有栖 【文庫】価格:1,012円

有栖川有栖さんの本は、いくつか読んだことがあるのですが、この作品は少し変わっていて、「故人の半生を探偵していく」といったスタイルで物語は進行していきます。

736pとページ数が多く、作品としても非常に読み応えがありました。

物語の舞台

舞台は、大阪の北新地、中之島といったエリアが中心で、メインの舞台は、中之島にあるホテルとなっています。作中では、そのホテルで生活していた人物が、「島の生活」と例えていました。2本の川に挟まれており、地形的に、「島」という意味合いなんですよね。

ちなみに、わたしは行ったことがないので、文章中の表現で楽しませてもらいましたが、作品の舞台となった名所に実際に行ってみたいものです!訪れた事のない場所にも観光して気になれる、このあたりが読書のメリットでもある!

余談なのですが、作品に登場する「~橋」がとても多かったため、調べてみたところ、大阪は、日本でも橋が多い県なんですね。少し古いデータですが、大阪の橋梁(小さな橋を含めた)の数は、北海道(13,451本)、東京(2,599本)に次いで3番目で、2,262本もあるそうです。

※国土交通省の「道路統計年報」 橋梁の現況(平成28年4月1日時点)調べ

あらすじの魅力

まず、この作品自体は、有栖川有栖さんの京都の私大・英都大学社会学部の准教授である、火村 英生(ひむら ひでお)が活躍する、通称 「火村英生シリーズ」と呼ばれる部類です。

ところが、序盤から火村英生が登場するわけではなく、ワトソン役としての有栖川 有栖(作中の登場人物です)が地道なフィールドワークを駆使して謎の解明に挑みます。

ここでの「フィールドワーク」というのは一般的な意味とは少し異なっておりまして、あくまで探偵としての調査の進め方をこう呼称しているようですね。

火村 英生(ひむら ひでお)
京都の私大・英都大学社会学部の准教授(シリーズ開始時は助教授)。本シリーズの探偵役。32歳〜34歳。独身。
犯罪社会学を専攻しており、研究の一環としてフィールドワークと称して実際の殺人現場へ赴いては事件を解決しているため、アリスからは「臨床犯罪学者」と称されている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』作家アリスシリーズ
作家アリスシリーズ – Wikipedia 最終更新 2023年7月29日 (土) 00:19

物語の醍醐味として、自分が感じたのは、上述の「フィールドワーク」と作品に登場する観光名所、地名との相性の良さです。知らない地名、名所がポンポンと登場するわけで、まるで観光しているような気分を味わえるんですよね。

橋を半分渡って中之島に<上陸>し、体の向きを西に転じれば、まず目に飛び込んでくるのは赤煉瓦造りの中央公会堂だ。

鍵のかかった男 幻冬舎文庫 / 有栖川有栖

その陰になっているのが重厚にして壮麗な府立中之島図書館、その奥が大阪市役所。メインストリートである御堂筋を隔てて日本銀行大阪支店。

鍵のかかった男 幻冬舎文庫 / 有栖川有栖

ちょっと小ネタ!

コーネル・ウールリッチというアメリカの作家の「聖アンセルム913号室」という作品が、コーデの差し色のように物語を引き立てるように登場しますが、こういった部分が他作品への興味をそそって、ますます小説の深みにハマっていくんですよね。今回の作品と同様に、こちらの「聖アンセルム913号室」もホテルを舞台にした作品です。

有栖川有栖さんも、この原稿を執筆するにあたって、ホテル関連の資料を読み込んだといったエピソードが解説に書いてあったような…。

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