「火刑法廷」。今回紹介するのは、ジョン・ディクスン・カーが1937年に発表した小説です。
※注 明確にネタバレには言及してませんが、大まかな結末には触れています。
あらすじ
作者であるディクスン・カーは、密室を使ったトリックを得意とする作家です。
今回の「火刑法廷」においては、フランスの実在した人物であるブランヴィリエ侯爵夫人(マリー・マドレーヌ・ドーブレー)の毒殺事件があり、ディクスン・カーはこの実際の事件をミステリーの中での『怪奇小説的モチーフ』としています。
物語の序盤は、デスパード家の主人が急死した、それを取り巻く不可解な謎に登場人物が翻弄されます。
そうしてストーリーが展開するにつれて、犯人候補の人物の背景には、上述した怪奇小説的モチーフをベースにしたオカルティックな要素が見え隠れするそんな物語。
怪奇小説としての楽しみ方
こういった形式の小説なので、当時の時代背景を想像して読むと非常に臨場感が増します。
簡単に中世ヨーロッパでの黒魔術ブームを押さえておくと良いです。
黒ミサ(くろミサ)は、ローマ・カトリック教会に反発するサタン崇拝者の儀式。サバトとも呼ぶ。神を冒涜することを旨とした儀式で、カトリック教会のミサと正反対のことを行う。中世ヨーロッパでは異教徒を批判する際に彼らは黒ミサの儀式を行い広めるとして攻撃した。
黒ミサの原型は中世まで遡れるが、魔女裁判が下火となった17 – 18世紀のイギリス、フランス、イタリアの貴族や知識階級において盛んに行われた[1]。例えばフランス王ルイ14世の寵姫であるモンテスパン侯爵夫人は黒ミサに使用するために1500人の嬰児を誘拐、殺害したという理由で告訴されている。
黒ミサ 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
最終更新 2023年5月4日 (木) 19:43
17世紀当時、ルイ14世の時代のフランスでは、奇妙な毒殺事件が多く、実在した人物である、「ブランヴィリエ侯爵夫人」は、ルイ14世の寵愛を受ける目的で、周囲のライバルを蹴落とすための殺人手段として毒殺を用いたとされています。
そんな17世紀の過去の事件を、どう物語に絡めてくるのか、という視点で読むと面白いです。
読んでみての感想 ※注 明確にネタバレには言及してませんが、大まかな結末には触れています。
この小説の面白いところは、結末を読者の想像に委ねている、そんなオープンエンディングの手法ではあるものの、推論の根拠となる事実が物語のそこかしこに散りばめられている点と感じました。
おとぎ話的な投げっぱなしのエンディング(とても言い方は悪いんですが笑)ではなく、読者に想像させる余地を残しておくことで、物語を両方の結末から鑑賞することができる、そういったところでした。
<犯人A>
事実1 + 事実2 + 事実… = 犯人A
<犯人B>
事実3 + 事実4 + 事実… = 犯人B
イメージで伝えるとするならば、こんな感じです。
見方によっては、「犯人A」、「犯人B」どちらにも受け取れるように緻密に物語が構成されています。
最後に作者に触れておこう!
最後に作者にも触れておきますと、ジョン・ディクスン・カーは、アメリカ合衆国の推理小説家です。
本格推理小説において、密室殺人の第一人者と呼ばれています。
80冊を超える作品群のうち、日本語に翻訳されている作品も豊富なのでお勧めです!
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